2022/07/18 15:51
〜N3について〜
N3は、「シンプルで弾きやすいギター」です。
2ピックアップ、1ボリューム、1トーン、ピックアップセレクタースイッチ、操作に迷うことはありません。
ミニハムバッカーかP90ピックアップ、スタンダードとはちょっと違う、オリジナリティーを求めるプレイヤーに。
〜N3への経緯〜
N3は2018年に生まれたモデルで、Neocasterから派生しました。Neocaster(2012年作)はテレキャスターの進化版を目指したモデルでした。それからドロップトップと2ハムのハードロック系を意識したNeo Mk2(2014年作)が生まれ、ボディーシェイプを見直したN3(2018年作)へと繋がりました。
Waltz Guitars Neocaster(2012)→
Waltz Guitars Neo Mk2(2014)→
Waltz Guitars N3(2018)→
〜あたらしいN3〜
N3 French Khaki
2022年のN3の大きく変わった点は、体へのフィット感です。ボディー外周Rをいままでより大きく取りました。それからエルボーコンターを入れることで身体への当たりが柔らかくなりました。
N3 Coral Orange p90c
弾きやすさの秘密は、ネックの仕込み角度。角度があることによりネックが身体に近づきます。少しの差ですが、この少しがなんか弾きやすいに繋がります。弾きやすさの秘密2つ目は、ネックグリップシェイプ。グリップシェイプはCとVの中間となっています。なぜこのシェイプかというと、ネックを握った時、手の指の腹にあたる部分を削る事で弾きやすくなるからです。ネックに適度な厚みを残しつつ、弾きやすくすることができます。
ハードウェアは信頼のゴトー。
ペグ、ブリッジ、ストラップピン、コントロールノブはゴトー製です。その中でも、ペグに力を入れています。通常のペグより小さめのSGi510のブラックカラーを採用しています。ワルツのヘッドは小ぶりの為、このペグはちょうど良いバランスになります。ブリッジはスタッドにロック機能のついた510UB、なめらかな形状で上質なメッキ仕上げです。
N3 Coral Orange MiniHum
見えないところで、プレイヤーの方は意識することが少ないと思われます、トラスロッドはタツタ製のチタンロッドを採用しています。シングルロッドで順反り、逆反りに効くダブルアクションです。チタンは軽く錆びない金属です。重量バランス、ネックの鳴りに一役買っています。
N3 Natural Brown
今回作製したN3を構成する木材は、ボディーはアルダー、ネックはメイプルです。ボディーとネック材はすべて同じ材種です。指板は数種使っていて違いがあり、Coral Orange p90cとFrench Khakiはマダガスカルローズウッド、Coral Orange MiniHumはリッチライト、Ntural Brownはブビンガを使っています。わずかにキャラクターの違いがあります。違いを楽しんでもらえれば幸いです。
塗装について、
わたしの今までの経験から、一番薄く塗れるのはフレンチポリッシュによるシェラック塗装。次にラッカー塗装、そしてポリウレタンです。ウレタンで薄く塗るのはかなりの技術と忍耐力を必要とします。
楽器としての良い塗装は、薄い塗膜です。製品としての良い塗装は、均一で整った塗膜です。
今回、楽器と製品のバランスをどう取るか、出した答えは、ネックはラッカー、ボディーはウレタンです。ネックは鳴り重視、ボディーは耐久性を重視しました。
その他、細かい点をあげていくと、
フレット数は23フレットです。フレットはジェスカーのニッケルシルバー。ジェスカーのフレットは精度が高く、指板へしっかりと打ち込む事ができ、通常のニッケルシルバーよりも硬さがあるので耐久性が高くなっています。
ボディーの厚みが47mmと通常より2~3mm厚いです。ボディーシェイプはやや小ぶりですが、しっかりと安定感があります。
ピックアップはすべてわたしが巻いていて、パワーよりも音の輪郭が出るビンテージよりの音を目指して巻きました。
ジョイントヒールはスラントしていてハイフレットを弾きやすくしています。
またネックジョイント面積を通常のモノよりも大きくとってあります。ネックとボディーの設置面積を広げることでしっかりと振動を伝える為と、ネックヒールの強度を考えて深めとなっています。
〜おわりに一言〜
いままでのワルツのギターは、ひとつのモデルを一本づつ作っていました。それは製作するわたしの能力が一本づつしか作れなかったからという事と、創作としてのギター作りだったからです。ですが、今回の2022年のN3は、5台まとめて作りました。それは作品と製品のバランスを製品側に寄せようと思ったからです。わたしは製品と作品の中間的なモノを好みます。例えばMacは造形の美しさから感じる作品性と、使いやすさを追求した製品とのバランスが優れていて製品と作品の間を感じます。そしてそういうモノは愛着が持てる。ワルツでもそのような製品と作品の間を感じられるギターを作れればといつも考えています。ワルツのギターもモノだけれど愛しく思えるそんなモノになれるといいなと思います。
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